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会長挨拶
2024年度会長就任挨拶
Message from the President
WAJIMA Yoshihiko
この度,山本誠前会長を引き継ぎ2024年度の日本ガスタービン学会会長に就任いたしました輪嶋善彦です。学会との繋がりは,まだ10年足らずではありますが,これまで様々な学会主催行事への参加や理事・委員会活動に携わらせていただき,ガスタービンを取り巻く社会環境や技術課題など沢山のことを学ばせていただきました。また,産官学の方々との交流を通し,私自身,人としての成長も感じることができました。その様な貴重な場を与えてくれた学会の会長を拝命することになり,その責務の重さに身の引き締まる思いです。恩返しの気持ちも込め,微力ですが本会発展のために全力を尽くす所存ですので,何卒よろしくお願い申し上げます。
さて,本会は一昨年に創立50周年という大きな区切りを迎えました。2022年度の記念式典,学会誌での記念特集号の発刊に続き,昨年度は記念行事の一環として「ガスタービン工学」を改訂し,第2版を2023 年6月30 日に出版しました。また,学会50年史データ集の編集作業を行い,学会ホームページの会員ページへの掲載を完了し,一連の創立50周年記念事業活動を無事終了することができました。これまで記念事業の企画・実行を指揮いただいた福泉元会長,山本前会長,渡辺委員長をはじめ,活動に携わっていただいたすべての方々に心より感謝申し上げます。
そして学会は次の50年に向け,新たなスタートを切ったわけですが,残念ながらその運営は前途洋々というわけにはいきません。足元に目を向けると,その最も大きな課題は会員数の減少です。当学会ではコロナ前に2000人近くであった会員数は,昨年度末には1700人程度まで減少してしまいました。他の学会もコロナを契機に会員数を大きく減らしてはいますが,当学会は特に学生会員や若手会員の減少が危機的な状況であり,歯止めをかけなければ学会の存続さえも危ぶまれる状況と言えます。この背景には、IT環境の発展や人的ネットワークの構築スタイルの変化など,若者を取り巻く社会環境の変化が大きく影響していると思います。しかし,根本的な問題は,大学でガスタービンを取り扱う研究室が少なくなっていることが象徴している様に,そもそもガスタービンという技術分野に将来性を感じていない,興味を持つ学生が少ないという点にあると言えます。その要因の一つは,未だ内燃機関は環境に対して悪であり,いつかは無くなっていくものと認識されているなど,ガスタービンの価値が世の中に正しく伝わっていないことにあると思います。この状況を打開することが,ガスタービン業界全体の課題であり,今学会が取り組まなければいけない喫緊の課題と言えます。
今でも世の中のインフラストラクチャーを構成し,社会や経済を支えているのはガスタービンを始めとした内燃機関であり,カーボンニュートラルを目指す社会においても,民間航空機や大型発電所など,圧倒的な性能を誇るガスタービンがなければ,その役割を果たすことが困難であることが明確になってきています。これらの事実と共に,ガスタービンやエネルギー技術で実現可能なカーボンニュートラル社会へのロードマップや,共通した未来社会のビジョンを産官学連携で描き,世の中に向けてわかりやすく発信していくことが必要です。また、よりメッセージ性の強いビジョンにするにはガスタービンだけでなく,それを動かすエネルギーリソースやインフラストラクチャーも含めた社会デザインが必要であり,この様な業界の枠を超えた議論こそ,先頭にたってリードしファシリテイトしていくことが学会の役割であると思っています。社会全体がガスタービンの価値を認識することで,躊躇しがちな社会実装への一歩を踏み出す後押しになり,様々な連携が進み,目指す社会の実現スピードも速まっていくことが期待できるはずです。
課題の解決にあまり時間的猶予はありません。ガスタービン及びエネルギー業界の発展に向けて,学会ができることは待ったなしで取り組む所存です。是非とも会員の皆様にはご支援とご協力を賜ります様よろしくお願い申し上げます。
最後に,会員の皆様のご健勝と益々のご活躍を祈念して,会長就任の挨拶とさせていただきます。